みなさんこんにちは!
FUKURAMU MUSIC SCHOOLの石川です!
今回はなぜ録音した自分の声を気持ち悪く感じてしまうのか解説していきたいと思います!
それでは早速いってみましょう!
自分の声を録音すると気持ち悪いと感じる原因
録音した自分の声を聴いて
「なんだか変な感じがする」
「自分の声じゃないみたいで気持ち悪い」
と感じる現象は、実はほとんどの人に共通する悩みです。
なぜこれほどまでに違和感を抱いてしまうのか、その具体的な原因を整理してみましょう。
①録音した声には骨伝導の音が無い
私たちが普段耳にしている「自分の声」と、スピーカーから流れてくる「録音された声」は、脳にとって全く別の情報として処理されています。
なぜかというと、普段話しながら聞いている声には、自分の体の中で響いている音が混ざっているからです。
自分の体の中で響く声は「骨伝導」といって、声帯の振動が、喉の組織や頭蓋骨を直接伝わって耳の奥に届いた音のことです。
自分が話しているときは、この骨伝導による振動が強くミックスされています。
一方で、録音された声には骨伝導による音は含まれておらず、純粋に空気を伝わって届く音だけが録音されています。
これを空気伝導といって、声が空気を振動させ、耳の穴を通って鼓膜に届く音のことです。
録音された声や、他人が聴いている声は、空気伝導によって伝わる音のみが記録・認識されているので、骨伝導による補正がありません。
骨伝導により伝わる音は、低い周波数が強調されやすく、実際よりも「太く、深みのある声」として聞こえる特性があるので、それが無くなった声は、いつもより声が高く、細く、あるいは頼りなく聞こえてしまうのです。
②声自体がプロとは違う
普段テレビや動画を見たり、音楽を聴いたりする中で、「声って大体こういうもの」という「基準」のようなものが、人それぞれあるかと思います。
録音した自分の声を初めて聞く場合、無意識に比較対象となるのはその「基準」です。
しかし、その「基準」はプロの歌手や声優、ナレーターなどの声が折り重なってできたものということを忘れてはなりません。
プロの声は、倍音構成が普通の人とは少し違います。
というのも、録音に必要なマイクには「乗りやすい音」と「乗りにくい音」があり、プロは「マイク乗りしやすい声」を狙って出しているからです。
基本的にはマイクは低い周波数の倍音よりも、高い周波数の倍音の方が拾いやすい特性があるので、プロの声には高い周波数の倍音がふんだんに含まれています。
(この倍音はシンガーズフォルマントと呼ばれています)
プロの出している「明瞭でくっきりした声」は、この高周波数の倍音によってもたらされているのです。
録音した自分の声がやけにこもって聞こえたり、弱々しく聞こえる原因は、骨伝導の有無もそうですが、単純に声自体も異なっているのです。
③録音した時にサマになる声の出し方ができていない
こちらも無意識に出来上がっている「基準」にまつわる話しですが、基準を形作っているプロは、声の出し方に関しても普通の人とは違います。
プロは長い年月をかけて、「録音して聞いた時にサマになって聞こえる歌い方・話し方」を身につけています。
そういった技術があるから、映像や音楽などを鑑賞していても特に違和感なく「普通」に受け取れるのです。
裏を返せば、録音した時に「普通」に聞こえるためには、専門的かつ高度な「技術」が必要だということです。
録音した自分の声を聞く機会があまり無かった人は、「普通に聞こえる」という当たり前なことに技術が必要などとは夢にも思っていないので、なおさら自分の声が気持ち悪く、他人よりも劣っているように感じられてしまうのです。
④単純に自分の声を聞くことに慣れていない
これもかなり大きな原因の一つです。
先述したように、普段の骨伝導も含めた自分の声と、録音した声では差があるのが自然です。
最初は「気持ち悪い!」と思ってしまう方がほとんどですが、100回、1000回と聞いていくうちに、「自分の声ってこんなもんだよな」と思えるようになっていきます。
この「慣れ」は、声の出し方や倍音構成がそこまで変化していなくとも起こるので、間違いなく気持ち悪いと感じる原因の一つではあるでしょう。
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声自体はどこまで変えられる?
ここまでで録音した自分の声が気持ち悪く聞こえる原因について書いて来ました。
骨伝導や慣れの問題があるので、自分の声がすぐに「録音しても違和感の無い声」になることはまず無いでしょう。
しかし、聞き慣れるしか無いのかと言われれば、そうではありません。
先述した「声自体」と「声の出し方」は、努力次第で180度変えることが可能です。
筆者自身も、初めて自分の声を録音して聞いた時にあまりの気持ち悪さに愕然とした人間の1人です。
しかし、今では自分の声を録音して聞いても何とも思わなくなりました。
むしろ「良い声出てるなぁ」とすら思います。
これは、慣れたのもありますが、明らかに声自体が良い方に変化した自覚があるからです。
ここからは、声の倍音構成、引いては声自体を、どのくらい変えられるのかを具体的に解説していきます。
音色を調整できる部位
人間の体には声の音色を調整できる部位がたくさんあります。
主要なのは以下の9つです。
・①呼吸系統(主なのは声量の調整だが、以下の8つ全てに影響を及ぼす)
・②声帯の厚さ(声の重みを調整)
・③声帯の開き具合(声の息成分の割合を調整)
・④喉頭蓋の倒れ具合(高周波数の倍音、声のキラキラ度合いを調整)
・⑤仮声帯の締まり具合(声の詰まり度合い、ノイズの有無を調整)
・⑥喉仏の位置(声の明るさを調整)
・⑦声道の形(母音の明瞭度合いと響き方を調整)
・⑧舌の位置(こちらも母音と響き方を調整)
・⑨口の開き方(こちらも母音と響き方を調整
声はこれら9つの要素が一瞬にして、かつ自動的に連携して発せられています。
さて、ここで少しイメージしてみて欲しいのですが、例えばあなたが音を出す機械をいじっているとして、音色を調整するツマミが9つもあったら、全然違う音がいくつも作れそうな気がしますよね。
実際の声もそのイメージの通りで、音色の調整次第で声の印象は180度変えられます。
確かに声は生まれ持った骨格や声帯の形に依存しますし、同じ声が世界に2つと無いのは間違いありません。
しかし、声真似が得意なモノマネアーティストなどを見ると分かりますが、自分の生まれ持った骨格の特性など無かったかのように、本家にそっくりな声が出せる方がたくさんいらっしゃいますよね。
音色を調整する9つのツマミがフル活用できれば、自分の望んだ音色を思うがままに出すことも不可能ではないのです。
「声を変える」とは、調整幅を広げること
人間の声には無限の可能性があることは少し伝わったかと思いますが、だからと言って全員が録音しても気持ち悪く無い声を出せるかと言うと、そんなことはありませんよね。
根本的な問題は、人によって9つのツマミの内のいくつかが封印されていたり、調整幅が限られていたりする点です。
例えば9つの7つのツマミが壊れていて、残った2つも少ししか動かせないのだとしたら、出せる声色も限られてきてしまいますよね。
自分で聞いても気持ち悪くない声を出すためには、この9つのツマミをボイストレーニングによって解放していくのが1番根本的な解決方法です。
声の出し方で声の印象はどのくらい変わる?
録音した自分の声が気持ち悪く聞こえないために努力できるポイントは、先述した通り
・声自体
・声の出し方
この2つです。
ここからは声の出し方によって、どのくらい気持ち悪く感じなくなるのかを解説していきます。
いわゆる「抑揚」が、声の印象を変える
声の出し方とは、いわゆる「抑揚」と呼ばれているものです。
抑揚とは何かを一言で言えば、「一文字一文字をどのように発するのか決める」ということです。
先程紹介した9つそれぞれのツマミを、一文字単位で設定していくのが「声の出し方(抑揚)を考える」ということです。
どういうことなのか、歌を例に説明します。
歌は、高音は「ハッキリ明瞭に」、低音は「息っぽく優しく」歌うのが、1番上手く聞こえやすいです。
これは筆者の膨大なレッスンデータに基づいた経験です。
この、「高音はハッキリ明瞭に、低音は息っぽく優しく歌う」というように決めることが、「抑揚」です。
これをやらないと、録音して聞いた時にとても「ぶっきらぼう」で、「棒読み」で、「感情がこもっていなさそう」に聞こえるのです。
これらが総合して、「気持ち悪い」という感想へと繋がっています。
反対に、抑揚を考えてあげるだけで、声自体は変わっていなくとも、上記のような印象は払拭できるのです。
声の出し方は、声自体より変化を感じやすい
声の出し方(抑揚)の調整は、声自体を鍛えるよりも圧倒的に声の変化を感じやすいです。
なぜなら、「声自体」を良くするのは楽器の素材をアップグレードするようなもので、筋肉のトレーニングを積み重ねる時間が必要ですが、「出し方」はその場で設定を変えるだけの「戦略」だからです。
先ほど、抑揚とは「一文字ずつツマミを設定すること」だと説明しました。
「この文字はツマミ②(声帯の厚さ)を薄くして、ツマミ③(開き具合)を大きくして優しく出そう」といったプランを立て、実行する。
これは、体が物理的に変わるのを待つ必要がなく、意識一つでその瞬間から変えられる技術です。
この一文字ごとのツマミ操作、つまり抑揚を徹底するだけで、たとえ声質そのものは今のままでも、録音した声は驚くほど「サマになった状態」に変化します。
声質改善には数ヶ月単位の時間が必要ですが、この「出し方」のコントロールであれば、録音と微調整を繰り返すことで、その日のうちに「自分の声、悪くないかも」と思えるレベルまで持っていくことができるのです。
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録音した自分の声を改善する方法
ここからは、自分の声を録音して聞いても気持ち悪いと感じない声へ改善にしていく方法をお伝えしていきます。
・声自体を改善する方法
・声の出し方を改善する方法
この2つに分けて紹介していきます!
声自体を改善する方法
こちらに関しては、先程紹介した9つの調整可能部位の機能が最大限活化されていくことを目指します。
代表的な練習方法を一つ一つ紹介していきます!
①呼吸系統
声の調整機能を活性化させる土台は呼吸系統です。
そして、呼吸の土台は「横隔膜」と「外肋間筋」です。
肺自体は筋肉ではないため、その周りにある横隔膜や外肋間筋をトレーニングすることで、吐く息を自在にコントロールできる状態を作ります。
【練習手順】
1. 肋骨の位置を確認する
両手を脇腹(一番下の肋骨あたり)に当てます。
親指を後ろに、残りの4本を前に添えて、土手を作るようにしっかりと掴んでください。
2. 肋骨を「横」に広げるように吸う
鼻からゆっくり息を吸いながら、当てた両手を外側に押し出すように肋骨を広げます。
肩が上がらないよう注意し、肺の底に空気を溜めるイメージで行ってください。
3. 拡張したまま「スー」と吐く
歯の間から細く「スー」と音を出しながら息を吐いていきます。
この時、広がった肋骨をすぐに閉じず、できるだけ外側に張り出した状態をキープ(ホールド)することに集中してください。
4. 限界まで吐き切って脱力する
これ以上形をキープできないというところまで吐き切ったら、一気に全身の力を抜いて肋骨を元に戻します。
この練習は、息が漏れ出るのを「止める」のではなく、吐く息の量を一定に「コントロール」するための筋肉を鍛えるものです。
呼吸が安定して呼気圧が整うと、声帯が効率よく振動し、録音した際にも「芯のある、よく通る声」として記録されやすくなります。
まずは1日3分、肋骨が動く感覚を意識することから始めてみてください。
②声帯の厚さ
声帯の厚みを自在に操るためには、厚くする筋肉(TA筋:甲状披裂筋)と、薄く引き伸ばす筋肉(CT筋:環状甲状筋)のパワーバランスを、同じ音程の上でコントロールする能力が必要です。
地声は分厚い状態、裏声は薄い状態と定義し、それぞれの音域を広げていくことで、声帯の質量の調整幅を最大化します。
練習手順:レジスター・オーバーラップ
1.地声:厚い状態(低音から中高音へ攻める)
まずは、あなたがこれ以上は地声だと苦しいと感じる限界の少し下(男性ならD4付近、女性ならA4付近)まで、地声でロングトーンします。
意識:声帯の身をしっかり合わせたまま、音程だけを上げていく感覚です。
目的:高い音域でもTA筋の収縮(厚み)を維持できるキープ力を養います。
2.裏声:薄い状態(高音から低音へ降ろす)
次に、出しやすい高音から、地声の音域まで裏声を降ろしていきます。
通常、低音に行くと地声にひっくり返りやすくなりますが、そこをあえてスカスカの薄い状態のまま耐えてロングトーンします。
意識:声帯を薄く引き伸ばしたまま、音程を下げても厚みを戻さない(TA筋を入れない)ようにします。
目的:低い音域でもCT筋主導で声帯を薄く保つ薄化の感覚を掴みます。
3.オーバーラップ(音域を被せていく)
地声で出せる高い音と、裏声で出せる低い音を交差させ、同じ音程を厚い声と薄い声の両方で出せるようにします。
具体的な音程例:男性ならG3からC4、女性ならC4からF4あたりのエリアを、地声(厚)と裏声(薄)それぞれで安定して5秒以上キープできるように繰り返します。
4.最終段階:厚みの無段階調整(ウェイト・スライド)
同じ音程のロングトーン中に、地声(厚)から裏声(薄)へ、またはその逆へと、音を途切れさせずにグラデーションのように厚みを変えていきます。
この練習で、厚い状態と薄い状態の境界線(換声点)付近でも質量を自由に選べるようになると、録音した際の声の印象を太さ・細さの両面から意図的にコントロールできるようになります。
③声帯の開き具合
声帯の開き具合のトレーニングとして、最も完成度が高く、かつ生理的にも理にかなっているのが「メッサ・ディ・ボーチェ(Messa di Voce)」です。
これは単一の音程で、極めて小さな声(ピアニッシモ)から、非常に大きな声(フォルテッシモ)へ、そして再び小さな声へと、音の強弱を全く段差なく変化させる練習法です。
録音した際の「声の説得力」は、この閉鎖のコントロール精度に直結します。
練習手順:メッサ・ディ・ボーチェによる閉鎖コントロール
1.完全なウィスパー(息漏れ)から音を立ち上げる
同じ音程のまま、最初は「ほぼ息」の状態からスタートします。
声帯を極めて薄く、かつ僅かに開いた状態で鳴らし始めます。
2.呼気圧に合わせて声帯の「閉じ」を強めていく
息の圧力を徐々に強めていくのと同時に、声帯が吹き飛ばされないよう、披裂軟骨を内転させて閉鎖の強度を高めていきます。
ここが声の「密度」が最も高まる局面です。
3.ピークから再び「閉じ」を緩めていく
最大音量に達したら、今度は呼気圧を弱めると同時に、声帯の閉鎖もわずかずつ解放していきます。
4.最後は再び「息」に戻して消える
音が消える寸前まで、声帯の振動と息の漏れ具合を緻密にコントロールし続けます。
この練習の目的は、単に大きな声を出すことではありません。
呼気圧(息の押し出す力)に対して、常に最適な「声帯の閉じ具合」を維持し続ける筋肉の柔軟性を養うことです。
このコントロールが身につくと、録音された声が「ただ叫んでいるだけ」や「ただ弱々しいだけ」にならず、一文字一文字に意図した通りの息成分を配合できるようになります。
④喉頭蓋の倒れ具合
喉頭蓋の倒れ具合は、声の「キラキラした輝き」や「通り」を決定づける非常に重要な要素です。
喉頭蓋が喉頭蓋谷側へ倒れ、喉頭蓋管が狭まることで、2.5kHzから3.5kHz付近の周波数が強調されます。
これが「シンガーズフォルマント」と呼ばれる、マイク乗りを劇的に良くする響きの正体です。
録音した声がこもって聞こえたり、オケに埋もれてしまったりするのは、この調整がうまくいっていないことが原因です。
練習手順:トワング・ボイスによる喉頭蓋管の狭窄訓練
1.「魔女」の笑い声のモノマネをする
よくアニメの魔女の役が「ヒーッヒッヒ」といった、非常に鋭く、少し鼻につくような鋭利な笑い声を発しますよね。
あの真似をしてみてください。
音質が鋭くなると共に、キンキンした甲高い倍音が感じられたら成功です。
これが喉頭蓋が倒れ、喉頭蓋管が狭まっている状態です。
2.鋭い音のままロングトーン
その鋭い音色のまま、一定の音程でロングトーンします。
喉を締め付ける(喉を詰める)のではなく、あくまでキラキラした倍音を保つことに集中してください。
3.鋭い響きを「実声」に混ぜる
次に、普通の「あー」という発声の中に、先ほどの「ヒーッヒッヒ」で掴んだ鋭い響きを少しずつ混ぜていきます。
普通の声(喉頭蓋が開いている)から、キラキラした倍音の乗った声(喉頭蓋が倒れている)へと、音色をグラデーションのように変化させます。
4.音色の明度コントロール
同じ母音のまま、響きを「明るく鋭い状態」と「暗くこもった状態」で交互に切り替えます。
喉頭蓋を倒す強さを変えることで、マイクに突き刺さるような鋭い声から、包み込むような柔らかい声までを調整できるようにします。
この練習で喉頭蓋の倒れ具合を自在に操れるようになると、録音した際に特別な加工をしなくても、最初から輪郭のはっきりした、存在感のある声として記録されるようになります。
⑤仮声帯の締まり具合
仮声帯の締まり具合:がなりや歪みを制御する仮声帯の調整
仮声帯の締まり具合は、声に「エフェクト」をかけるような役割を果たします。
本来、仮声帯は声帯の保護や呼吸の停止時に強く閉じる部位ですが、ここを意図的に近づけることで、ロックやソウルで使われる「がなり(ディストーション)」を生み出すことができます。
録音した声に迫力が足りない時や、感情的なニュアンスを加えたい時にこの調整が役立ちます。
ただし、喉全体を締めてしまうと怪我の原因になるため、仮声帯だけを独立させて動かす感覚を掴むことが重要です。
練習手順:仮声帯の段階的関与(がなりコントロール)
1.深い溜息から「うがい」の感覚へ
喉の奥をリラックスさせ、深く太い溜息を吐きます。
その状態のまま、水がない状態で「うがい」をする時のように喉の奥を震わせて、ガラガラとしたノイズを少量混ぜます。
これが仮声帯が微振動している状態です。
2.ノイズと実声の分離と融合
音程のない「ガラガラ」というノイズだけの状態から、そこに薄く地声を混ぜていきます。
ノイズ100%:息だけのガラガラ音
ノイズ50%+実声50%:倍音の乗った「がなり声」
実声100%:ノイズのないクリアな声
この比率を、喉の痛みが全くない範囲でコントロールします。
3.仮声帯を横に広げる(クリア化)
逆に、仮声帯を外側にグッと広げる(リトラクション)練習も重要です。
思い切り笑う時や、驚く時の喉の形を意識すると、仮声帯が横に退避し、空気の通り道が最大化されます。
4.がなりのオン・オフ切り替え
ロングトーンの途中で、一瞬だけ「がなり」を入れ、すぐにクリアな声に戻すという切り替えを行います。
この練習で仮声帯の締まり具合を調整できるようになると、録音において「わざとらしくない自然な力強さ」を表現できるようになります。
クリアな声とがなり声を自在に行き来できる能力は、録音時の表現の幅をグッと広げてくれます。
⑥喉仏の位置
喉仏を上下させることは、声帯から口出口までの空間(声道)の長さを変えることを意味します。
物理的に管が長くなれば音は暗く太くなり、短くなれば明るく鋭くなります。
録音した自分の声が「子供っぽすぎる」あるいは「老けて聞こえる」と感じる場合、この喉仏の位置による音色の明るさ調整が鍵となります。
練習手順:サイレン・ボイスによる喉頭位置の独立操作
1.喉仏の動きを確認する
鏡の前で唾を飲み込みます。
喉仏がグッと上に上がり、その後元の位置に戻るのを確認してください。
この「上がる動き」と、あくびをした時の「下がる動き」を意識的にコントロールすることを目指します。
2.無声音での「空間の伸縮」
声を出さずに、喉仏を上下させます。
喉仏を上げる:口の中の空間が狭くなり、奥が閉まる感覚
喉仏を下げる:喉の奥が縦に広がり、空間が広がる感覚
これを持続的に行い、喉周りの筋肉を柔軟にします。
3.サイレン・スライド
「う」または「お」の母音で、低い音から高い音へ滑らかにスライドさせます。
通常、音が高くなるにつれて喉仏は上がろうとしますが、あえて喉仏を「下げたまま」高音までスライドさせてみてください。
これを「暗いサイレン」と呼びます。
逆に、低い音のまま喉仏を極限まで引き上げて「明るいサイレン」も行います。
4.音程を固定した明暗コントロール
同じ音程でロングトーンをしながら、喉仏の位置だけを上下させます。
喉仏を上げる:明るく、キャラクターボイスのような平たい音色
喉仏を下げる:オペラ歌手のような、深く響きのある音色
この2つの極端な状態を行き来し、その中間にある「マイクに最も馴染むポジション」を探します。
この練習で喉仏の位置を自在に操れるようになると、曲のジャンルや自分の声の個性を生かした「最も魅力的なトーン」を狙って出せるようになります。
⑦声道の形
声道の形は、出したい音質や発音に合わせて無意識かつ複雑に変化するため、特定の形を狙って動かすトレーニングは現実的ではありません。
むしろ重要なのは、声道の形を歪めてしまう最大の要因である「舌の力み」を排除し、本来確保されるべき響きの空間を維持するという考え方です。
録音した声が詰まって聞こえたり、特定の言葉で音色が急変したりするのは、舌が不必要に盛り上がって声を通り道を塞いでいることが主な原因です。
発声と舌の動きを分離し、空間を潰さない状態を定着させます。
練習手順:舌の干渉を排除する分離トレーニング
1.舌の脱力ポジションの確保
舌先を下歯の裏側に軽く触れさせ、力を抜いて下顎の底に平らに寝かせます。
鏡を見て、舌の奥(舌根)が盛り上がらず、喉の奥がしっかり見えている状態を作ります。
この形が、声を歪ませないニュートラルな空間です。
2.舌の形を固定したままの母音移行
喉の奥の広さを変えないように意識しながら、最小限の動きで「ア・エ・イ・オ・ウ」と発声します。
特に「イ」や「エ」の際に舌根が持ち上がって空間を押しつぶそうとする反応を、意識的に抑え込みます。
舌に邪魔をさせず、声道の形状を一定に保つことに集中してください。
3.発声と舌の独立可動(タング・アウト)
「あー」と一定の音程で声を出し続けながら、ゆっくりと舌を外へ突き出し、また元に戻します。
舌を動かしている最中に、声の響きや喉の奥の空間が変わってしまう場合は、舌と発声が癒着しています。
舌がどう動いても、声道の響きが変わらない状態を目指します。
4. 舌を出したままのスケール練習
舌を軽く外に出した状態で固定し、そのまま音程を上下させるスケール練習を行います。
音程が変わる際、舌が口の中に戻ろうとしたり奥へ引っ込んだりする動きを封じることで、舌の力みに頼らない発声回路を強化します。
自ら空間を作ろうと力むのではなく、舌という「障害物」をどけることで、自然に声道が確保されている状態をキープします。
この考え方で舌の干渉を排除できるようになると、録音した際の声に一貫した「奥行き」が生まれます。
言葉が変わっても響きの土台が崩れないため、聴き手にとってストレスのない、安定した歌声として記録されるようになります。
⑧舌の位置
舌の位置は、声帯の動きと密接に関係しています。
舌は甲状舌骨筋などを通じて喉仏と間接的に繋がっているため、舌の付け根(舌根)が適切に引き上がらないと、声帯を薄く引き伸ばす動きを阻害し、高い声が出にくくなる原因となります。
前項で練習した「舌をどけて空間を作る」感覚に加えて、ここでは舌を能動的に引き上げる力を養い、高音域でのスムーズな発声を可能にします。
練習手順:k・gの子音による舌根引き上げトレーニング
1.舌の「付け根」の動きを意識する
鏡を見ながら「カッ、カッ」と発声します。
このとき、舌先ではなく舌の奥の方が軟口蓋(口の天井の奥)に向かってグッと持ち上がる感覚を確認してください。
これが舌根の引き上げに関わる動きです。
2.kとgの子音を混ぜたスケール練習
「キ・キ・キ」や「ギ・ギ・ギ」という音を使い、低音から高音までスケールで動かします。
kやgの破裂音を作る瞬間に、舌の奥が瞬発的に引き上がる力を利用して、高い音へアプローチします。
3.高音域での舌のポジションキープ
自分が少し高いと感じる音域で「ギ」の音をロングトーンします。
舌根が下がって喉を押し下げようとする力に抵抗し、舌の奥を高い位置に保つことで、声帯が薄く引き伸ばされやすい環境を維持します。
4.舌根の引き上げと発声の連動
kやgをきっかけに舌を引き上げた後、そのまま「イ」や「エ」の母音に繋げます。
舌根が高い位置で安定していると、喉仏が過度に押し下げられず、高音域でも無理なく声帯が伸展し、クリアな響きが得られるようになります。
この練習で舌の位置を適切にコントロールできるようになると、高音域での「声の詰まり」が解消されます。
録音した際にも、高音が細くならず、かつ苦しさを感じさせない伸びやかな歌声として記録されるようになります。
⑨口の開き方
口の開き方ば、声道で作られた響きを最終的に外へと放出する「放射効率」に直結します。
発声の際に無意識に口が閉じてしまうと、音の出口が狭まり、録音した声がモゴモゴとこもって不明瞭な印象を与えてしまいます。
口を大きく開けること自体が目的ではなく、口が閉じることによって生じる「響きの遮断」を防ぎ、声のエネルギーを効率よくマイクへ届けることが重要です。
練習手順:指一本分のスペース保持と顎の脱力
1.指一本分の隙間を固定する
上下の前歯の間に、指一本分(または人差し指の第一関節程度)の隙間を作ります。
この隙間を「声の出口」の最小サイズとして意識します。
2.隙間を保ったままハミングから発声へ
指一本分の隙間を開けたまま、まずは「んー」とハミングします。
その後、顎の位置を変えずに口から「あー」と音を出します。
音を出した瞬間に口が閉じようとする反応を抑え、隙間を維持し続けます。
3.顎の関節を「落とす」感覚の定着
口の横、耳の付け根あたりにある顎関節に手を当てます。
口を開けるときに力を入れて開くのではなく、顎の重みで下に「落ちる」感覚を掴んでください。
関節に余裕がある状態をキープして声を出す練習を繰り返します。
4.フレーズ末尾まで開きを維持する
言葉を発声し終わる瞬間に、口が閉じて音が消えてしまわないよう注意します。
一音一音の語尾まで、指一本分のスペースを「放置」して開けておくことで、音色が最後まで一定に保たれます。
この練習で口が閉じてしまう癖を解消できると、録音された声の輪郭がはっきりとし、言葉の明瞭度(滑舌)が劇的に向上します。
マイクに対して常に一定の音圧で声を届けられるようになるため、ミキシングの際にも扱いやすい良質なテイクが録れるようになります。

声の出し方の改善方法
「録音した際の違和感を無くす」という観点で見れば、先述した
「声帯の開き」
こちらを一文字単位で調整していくことで劇的に抑揚がついたように聞こえ、違和感が減ります。
前章のメッサディボーチェを実践に落とし込む
前章で解説したメッサディボーチェは、完全に息だけの状態から芯のある声へと、声帯の開き具合を滑らかに変化させる練習でした。
この息が漏れる状態と声帯が閉じた状態のグラデーションを、今度は実際の会話や歌詞の「一文字単位」に当てはめていきます。
メッサディボーチェで培った声帯のコントロール力があれば、言葉のどの文字に息を混ぜて柔らかくし、どの文字で声帯を閉じて輪郭をはっきりさせるかを自在に選択できるようになります。
息が漏れる発声は、声に奥行きや感情を持たせるための不可欠な要素です。
これを声帯がしっかり閉じた芯のある声とバランスよく組み合わせることで、話し声でも歌声でも、自然で豊かな響きが生まれます。
話し声と歌声における一文字単位の調整
録音した自分の声が平坦に聞こえる最大の原因は、話し声であれ歌声であれ、フレーズの最初から最後まで声帯の開き具合が一定になってしまっていることにあります。
これを解決するためには、言葉の一文字ごとに声帯の開き具合を緻密に調整します。
例えば、挨拶や歌い出しの一文字目はあえて声帯を開いて息を多く含ませることで、親しみやすさや切なさを演出します。
逆に、強調したいキーワードやサビの重要な一文字に対しては、瞬時に声帯を閉じ、力強い響きを持たせます。
音量だけで抑揚を作ろうとするのではなく、一文字ごとの声帯の密閉度を変えることで、立体的で説得力のある声として録音されるようになります。
録音を通した聞こえ方のギャップを埋める
録音機材を通した声は、自分が発声している時に体感している変化よりも、はるかに変化が乏しく記録される傾向があります。
そのため、一文字ごとの声帯の開き具合の調整は、自分自身ではやりすぎだと感じるくらい極端に行う必要があります。
まずは実際に自分の話し声や歌声を録音し、客観的に聞き返します。
声帯の開きを調整したつもりの箇所が、録音データ上でしっかりと息の混ざった質感や芯のある音の対比として表現されているかを確認します。
平坦に聞こえる部分があれば、その箇所を一文字単位で見直し、声帯の開き具合を再度調整して録音し直します。
このマイクを通した音との地道なすり合わせが、録音特有の違和感を消し去るための確実なアプローチとなります。
よくある質問
ここまでで、録音した自分の声が気持ち悪く聞こえる原因や、改善の方向性について解説してきました。
最後に、特に多くの方が疑問に思いやすいポイントを、よくある質問としてまとめていきます。
録音した自分の声が気持ち悪いのは普通ですか?
はい、かなり多くの人が感じる自然な違和感です。
普段聞いている自分の声には、骨や頭の中を伝わる「骨伝導」の音が混ざっています。
しかし、録音された声にはその骨伝導が含まれず、空気を伝わった音だけが記録されます。
そのため、いつもより高く、細く、頼りなく聞こえてしまい、「自分の声じゃないみたい」と感じやすくなります。
録音した声が他人に聞こえている本当の声ですか?
基本的には、録音された声の方が他人に聞こえている声に近いです。
他人はあなたの骨伝導の音を聞いているわけではなく、空気を通して届いた声を聞いています。
そのため、録音した声に違和感があっても、それは他人から見れば普段聞いているあなたの声に近いものです。
録音した声がこもって聞こえるのはなぜですか?
骨伝導がなくなることに加えて、声自体の倍音構成やマイク乗りの影響があります。
プロの歌手や声優、ナレーターの声は、高い周波数の倍音が含まれやすく、録音した時に明瞭でくっきり聞こえます。
一方で、そうした響きが少ないと、録音した声がこもったり、弱々しく聞こえたりしやすくなります。
録音した自分の声は慣れれば気持ち悪くなくなりますか?
慣れによって違和感はかなり減ります。
最初は「気持ち悪い」と感じても、何度も聞いていくうちに「自分の声はこういうものだ」と受け入れやすくなります。
ただし、慣れるだけでなく、声自体や声の出し方を改善することで、録音した声への印象をより良く変えていくことも可能です。
録音しても気持ち悪くない声に変えることはできますか?
できます。
添付の文章では、声の印象は「声自体」と「声の出し方」の2つで変えられると説明されています。
声帯の厚さ、声帯の開き具合、喉仏の位置、舌の位置、口の開き方など、声の音色を調整する要素は複数あります。
また、一文字ごとに息の混ぜ方や声帯の閉じ具合を調整することで、録音した時の平坦さや違和感を減らすこともできます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
録音した自分の声を気持ち悪く感じるのは、決して珍しいことではありません。
普段聞いている自分の声には骨伝導の音が含まれているため、録音された声とは聞こえ方が大きく変わります。
さらに、声自体の倍音構成や、録音した時にサマになる声の出し方ができているかどうかによっても、印象は大きく変わります。
最初は違和感があって当然ですが、何度も録音して聞き返したり、声の出し方を少しずつ調整したりすることで、録音した自分の声への印象は変えていくことができます。
自分の声にショックを受けた方も、まずは必要以上に落ち込まず、「ここから整えていけるもの」と捉えてみてください。
FUKURAMU MUSIC SCHOOLでは、声そのものの改善はもちろん、録音した時に自然に聞こえる話し方や歌い方も、一人ひとりの状態に合わせてレッスンしています。
録音した自分の声に違和感がある方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
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