こんにちは!FUKURAMU MUSICです。
日頃レッスンを行っている中で、多くの生徒さんからよくご相談いただくのが「途中で声がスムーズに繋がらなくなる」というお悩みです。
特に地声と裏声の境目あたりのコントロールは、一人で練習していてもつまずきやすいポイントではないでしょうか。
今回は、そうした発声のお悩みを解決する鍵となる「ミックスボイス」についてお話しします。
ミックスボイスとは?
ミックスボイスとは、一般的に「地声と裏声をスムーズに繋ぐ声」として説明されることが多い発声法です。
実際にレッスンに通われている生徒さんの中にも、「地声」と「裏声」の中間の声が出せず、どのように声を出せばよいのか分からずに困っていらっしゃる方がとても多く見受けられます。
特にE4(真ん中のミ)付近の中音域は、声のグラデーションを作るのが非常に難しいエリアです。
この音域に差し掛かると、喉に力を入れて張り上げた地声で押し通すか、あるいは急にカサカサとした弱々しい裏声に逃げてしまうかという「2択」になってしまい、「思うように歌えない」と悩まれる方が多くいらっしゃいます。
張り上げると喉が苦しくなり、裏声に切り替えると急に声のボリュームや質感が変わってしまう……。
そんな声のギャップを埋め、スムーズで心地よい発声へ導いてくれる存在こそが、いわゆるミックスボイスです。
地声の響きや強さを保ちながら、裏声のような伸びやかさをあわせ持つこの声を身につけることで、音域の境目を感じさせない自然な歌声へと繋がっていきます。
「ミックスボイス筋」の正体
実は発声の世界には、俗に「ミックスボイス筋」と呼ばれる筋肉が存在することをご存知でしょうか。
専門的には、声帯の本体そのものを構成している「声帯筋(甲状披裂筋の内側部)」という筋肉を指します。
ベルカント唱法を研究した著名な声楽研究者フレデリック・フースラーは、この声帯筋の活性化こそが、ミックスボイスを可能にする鍵であると提唱しました。
普段から歌い慣れていない方の場合、この声帯筋がうまく機能せず、いわば「休眠状態」になっていることが少なくありません。
この筋肉がしなやかに働くようになって初めて、高音域でも声が薄くならず、適度な密着感と響きを持たせることができるようになります。
声帯筋をピンポイントで鍛える「アンザッツ3a・3b」
声楽研究者のフースラーは、声の響かせる位置(あてる場所)を変えることで特定の筋肉群を刺激する「アンザッツ」という発声エクササイズを考案しました。
その中で、まさにミックスボイスの鍵となる「声帯筋」へ直接アプローチできるメニューが、アンザッツ3a と アンザッツ3b です。
それぞれを詳しく解説していきます。
アンザッツ3a・3bを行う上で大切なこと
声帯の構造を見てみると、表層から順に「粘膜」「靭帯」、そして声帯を分厚くする2種類の筋肉という、合計4つの層で構成されています。
この筋肉の1層目(全体で見ると3層目)にあたるのが、声帯の厚みを繊細にコントロールしてくれる「声帯筋」です。そして、さらに奥の4層目には、声帯を大雑把に分厚くする「甲状披裂筋」が控えています。
アンザッツ3aや3bを行う最大の目的は、この3層目にある「声帯筋」をピンポイントで刺激することです。
そのためには、4層目の甲状披裂筋が過剰に働いて声を力任せに固めてしまわないよう、コントロールしてあげる必要があります。
しかし、声帯は自分の意思で直接「この層だけを動かす」といった操作ができません。
そこで重要になるのが、発声時に**「息を止めないこと」「息を堪(こら)えないこと」**です。
本来、息を止める役割は声帯のすぐ上にある「仮声帯」が得意としており、声帯自体は息を止める働きがあまり得意ではありません。
ですが、息を強く堪えようとすると、得意ではないはずの声帯まで一緒に分厚くなり、息を止める動きに加担しようとしてしまいます。
その結果、4層目の甲状披裂筋まで巻き込んでしまい、声帯全体が大雑把に分厚く固まってしまうのです。
だからこそ、息を止めたり堪えたりする動きを最小限にしてあげることが大切になります。
息を余計に止めない環境を作ってあげることで、声帯が過剰に分厚くなるのを防ぎ、狙い通り「声帯筋」だけをピンポイントで繊細に働かせることができるという仕組みです。
FUKURAMU MUSIC SCHOOLの「ミックスボイスレッスン」なら本格的なミックスボイスが学べる!-1024x682.jpeg)
アンザッツ3a・3bを行うまでの準備
メカニズムを踏まえた上で、実際に声帯筋をピンポイントで働かせるための「準備ステップ」に入りましょう。
ここでの目的は、仮声帯などの余計な力みを取り除き、息が一切滞らない状態を作ることです。
そのために「ハミング(鼻音)」を活用していきます。
・ステップ①:鼻で深呼吸をする
まずは鼻で深呼吸を行います。
自分の耳に「スー、ハー」と鼻息の音がしっかり聞こえるくらい、丁寧に吸って吐き出してみましょう。
このステップは、喉に力みがない「息の流れが何も阻害されていない状態」を、自分の感覚として確かめるために行います。
・ステップ②:ハミングで声を乗せる
スムーズな息の流れを感じられたら、その呼吸のまま、出しやすい好きな音程でハミング(「ンーー」という声)を入れてみます。
ここで最も重要なポイントは、「ステップ①の息だけの時と同じくらい、声と一緒に鼻から息が出続けているかどうか」です。
もし声を入れた瞬間に鼻息が途切れたり詰まる感覚があれば、①と②を繰り返してみてください。
息が阻害されている場合、声帯が閉じると同時に「仮声帯」などの周辺組織まで一緒に寄ってしまい、息の通り道を狭めていると考えられます。
・ステップ③:ハミングのまま「マ行」へ繋げる
息の流れを止めずに声を乗せられるようになったら、ハミングのポジション(Mの発音)を保ったまま「Hmm… Mum-Mum-Mum(ンーー・マン・マン・マン)」と、滑らかに「マ行」の言葉へ移行していきます。
マ行は鼻へ息が抜けやすいため、ハミングで作った「息の通り道」をそのままキープして発声するのに最適な言葉です。
実践時に意識したい「追加のチェックポイント」
準備の精度をさらに上げるために、以下の2点もぜひ意識してみてください。
・手の甲で「息の温かさ」を確かめる
ステップ①〜③を行っている間、鼻の前にそっと手の甲をかざしてみてください。
声を注いでいる間も、息だけの時と同じように「温かい息の風」が手に当たり続けていれば、仮声帯が邪魔をせず息がスムーズに流れている証拠です。
・音量は「会話のトーン」で十分
「しっかり発声しよう」として大声を出してしまうと、せっかく抑えようとしている甲状披裂筋(大雑把に分厚くする筋肉)が刺激されてしまいます。
最初はごく自然な会話程度の音量、あるいは「少し優しめの声」で行うのが、声帯筋だけをピンポイントで目覚めさせるコツです。
この「息が通り抜けている状態」が作れて初めて、喉を力ませずに「声帯筋」だけを繊細に刺激する準備が整います。
アンザッツ3aの実践トレーニング
準備ステップで掴んだ「息の通り道」をキープしたまま、いよいよ声帯筋をピンポイントで刺激する「アンザッツ3a」に入っていきます。
・音域と発声: C4〜G4の範囲で「ア」のロングトーン
まずは「ア」の母音を使い、C4からG4(真ん中のド〜ソ付近)の音域で、声をまっすぐ長く伸ばしてみましょう。
・声質のイメージ: 息の流れを保ちながら、ハッキリした強い声質へ
準備段階で確かめた「息がスムーズに抜け続けている感覚」をそのまま維持しながら、徐々に音色をハッキリとした芯のある強い声質へと変化させていきます。
絶対に守りたい「2つのルール」
アンザッツ3aを行う際、意識することは次の2点だけで十分です。
・1. 息を止めない・堪えないこと
声を強くしようとするあまり、喉をギュッと閉じて息を止めてしまわないよう注意します。
常に息が心地よく通り抜け続けている状態を一番に優先してください。
・2. 裏声に逃げず「地声の体感」をキープすること
喉を楽にしようとしてフワッとした裏声に切り替えてしまうと、声帯筋に十分な刺激が入りません。
声が弱々しく感じられても構いませんので、「地声で出している」という感覚をしっかり残します。
最初は「スカスカの声」で大正解
このトレーニングを初めて試すと、多くの方が「えっ、こんなにスカスカした頼りない声でいいの?」と驚かれます。
息を止めずに地声感を保とうとすると、最初は声帯筋の力だけで声を鳴らしきれず、息がたくさん混じったスカスカの声になりやすいのです。
ですが、実はそのスカスカな声こそが、正しくアプローチできている証拠です。
喉をギュッと固めてしまう大きな筋肉(甲状披裂筋)を使わず、声帯筋だけをピンポイントで使えているからこそ起こる、とても自然な反応だからです。
息を止めず、地声感を保ったまま練習を重ねていくと、眠っていた声帯筋が少しずつ覚醒していきます。
すると、最初はスカスカだった声に少しずつ密着感が生まれ、喉に負担をかけない「芯のある強い地声」へと自然に育っていきますよ。
アンザッツ3bの実践トレーニング
アンザッツ3aの感覚がつかめたら、次は裏声を使って声帯筋にしなやかなコントロール力を与えていく「アンザッツ3b」に挑戦してみましょう。
・音域と発声: A4からB3への下降ライン(母音は「ア」)
準備ステップで感じた「息の流れ」をしっかり保ちながら、裏声の「ア」で声を出し、高音のA4付近から低音のB3付近までスーッと音階を下げていきます。
E4付近で起こる変化とトレーニングのポイント
・1. 最初は「E4からのスカスカ感」があって当然
このトレーニングを行うと、ほぼ全員と言っていいほどE4(真ん中のミ)周辺に差し掛かったところで声がスカスカになり、裏声が保てなくなります。
しかし、声帯筋が正しく活動し始めて育ってくると、E4から下の音域でも裏声のまま安定し、むしろスムーズに声を出しやすくなっていく感覚が育っていきます。
・2. まずは「甲高い声質」からスタート
下降していく中で声の芯を保つため、最初は少し「甲高い(キンキンとした)声質」になってしまっても大丈夫です。
声帯筋へ刺激を入れるための第一歩ですので、無理に太い声にしようとせず進めてみてください。
・3. 慣れてきたら「ナチュラルでハッキリした声」へ
感覚が掴めてきたら、徐々に甲高いトーンから力を抜き、過度に声を尖らせなくてもハッキリとした「ア」の音色が出せるように調整していきます。
3aで地声側から声帯筋を刺激し、3bで裏声側からその働きを整えてあげることで、眠っていた声帯筋が少しずつ目を覚ましていきます。
焦らずゆっくりと音階を下降させながら、自分の声の変化を楽しんでみてくださいね。
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よくある質問
Q1. ミックスボイス習得に向けたトレーニングは、毎日行っても大丈夫ですか?
A1. はい、短時間であれば毎日行っていただいて問題ありません。
ただし、ミックスボイスのカギとなる声帯筋は非常に繊細な筋肉です。
長時間にわたって負荷をかけ続けると筋肉が疲労し、無意識のうちに喉周辺の余計な筋肉で補おうとする力みが生まれてしまいます。
1日5〜10分程度を目安に、集中して丁寧に取り組むのが効果的です。
Q2. ミックスボイスを出すためのアンザッツは、3aと3bのどちらから取り組むのが効果的ですか?
A2. 基本的には準備ステップで息の流れを整えた後、ご自身が出しやすいと感じる方から始めていただいて構いません。
なお、日頃から地声で無理に張り上げる癖がある方は「アンザッツ3b(裏声アプローチ)」から、逆に声が弱々しく抜けやすい方は「アンザッツ3a(地声アプローチ)」から取り組むと、ミックスボイスに必要な喉の筋バランスが整いやすくなります。
Q3. ミックスボイス筋(声帯筋)を鍛えて、スカスカした声から芯のある声に変わるまでどのくらいの期間がかかりますか?
A3. 個人差はありますが、正しく息を流すフォームを保って毎日コツコツ継続した場合、2〜3週間ほどで「息漏れの感覚が減った」「E4付近のコントロールがしやすくなった」といった変化を実感される方が多いです。
最初から強い声を出そうと焦らず、ミックスボイスに必要な声帯筋が少しずつ目覚めていくプロセスを重ねることが大切です。
Q4. ミックスボイスの練習中に喉の痛みや違和感が出た場合はどうすればいいですか?
A4. もし途中で喉の痛みや乾き、強い疲労感を感じた場合は、すぐにトレーニングを中断して喉を休ませてください。
息を堪えてしまっていたり、仮声帯などの周辺組織に過剰な力みが入っているサインと考えられます。
再開する際は一度「深呼吸とハミングによる準備ステップ」に戻り、息が滞りなく流れているかを確かめてから行いましょう。
Q5. アンザッツは、そのまま歌の中でミックスボイスとして使うための発声方法なのですか?
A5. いいえ、アンザッツはあくまでミックスボイスに必要な筋肉(声帯筋など)をピンポイントで鍛えるための「訓練用エクササイズ」です。
歌唱時に直接アンザッツの発声そのものを再現しようとするものではありません。
トレーニングによって声帯筋が正しく機能するようになった結果として、自然とまとまりのあるミックスボイスが歌声の中に生まれていきます。
まとめ
今回は、ミックスボイスのカギとなる「声帯筋」の鍛え方やメカニズムについてお話ししました。
ミックスボイスの習得は、焦らずコツコツと声帯筋を育てていくことが一番の近道です。
最初はスカスカとした頼りない声に感じられても心配いりません。
毎日少しずつ息の流れを確かめながら、ご自身の声が育っていく変化をぜひ楽しんでみてくださいね。
もし「自分のやり方が合っているか不安」「一人ではなかなか感覚がつかみにくい」と感じられた方は、ぜひ一度 FUKURAMU MUSIC のレッスンにお越しください。
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