裏声を出すと、声がスカスカになってしまう。
反対に、細くキンキンした声になってしまう。
そんな悩みを持っている方は多いと思います。
裏声は、高い声を出すためだけに使う声ではなく、音域を広げたり、中音域を優しく歌ったり、ミックスボイスの土台を作ったりする上でも重要な発声です。
そのため、裏声が安定してくると、歌える曲の幅も、声の表現の幅も大きく広がっていきます。
今回は、裏声を練習するメリット、裏声が弱々しくなる原因、そして裏声を強くするための練習方法をわかりやすく解説します。
裏声を練習するメリット
裏声の練習にはたくさんのメリットがあります。
ここではレッスンでの実例も交えながら説明していきます。
音域が広がる
裏声を練習することで、声帯を伸ばす「輪状甲状筋」という筋肉がトレーニングされていきます。
輪状甲状筋が活発であればあるほど、声帯を強く引き伸ばせるようになるので、高音が出やすくなり、音域が拡大します。
実際のレッスンでも、地声の高音の限界がG4という生徒さんに裏声のトレーニングを施したところ、地声の音域がB4まで伸びた実例があります。
裏声の音域は男女関わらずB5まであると言われているので、B5を目指して裏声を出し続けることで、輪状甲状筋は強くなっていきます。
輪状甲状筋が強くなれば、裏声だけでなく地声の音域も広がるのです。
中音域の弱声が安定する
みなさんC4〜C5までの好きな音程を、極限まで小さい声で発声してみてください。
裏声になりませんか?
実は、中音域以上の音を小さい声で出そうとすると、声は必ず裏声になるのです。
もし仮に裏声がスカスカで弱々しかったら、中音域を小さな声で歌おうとした瞬間に、コントロールの効かない弱々しい声になってしまいます。
そんな状態では、平井堅さんの「瞳をとじて」のような、中音域を優しい声で歌わなければいけない曲はとても歌えないですよね。
「低音は優しく出せるけど、中音以上が優しく出せない」と悩んでいる方がやるべきなのは、裏声の練習なのです。
レッスンで裏声を練習し始めた生徒さんは、最初こそ中音を張り上げて出してしまいますが、徐々に「そこまで力を入れなくても出せそう」という「予感」が生まれてきます。
そして最終的には、地声の体感を保ちつつ、優しい音質で中音域を出せるようになります。
一見無関係そうに思えるかもしれませんが、これらの成長は全て、裏声の練習によるものなのです。
ミックスボイスの土台が整う
地声と裏声の中間の声とされているのがミックスボイスです。
ミックスボイスの習得方法には諸説ありますが、「声帯筋」という筋肉を目覚めさせることで習得できるという説があります。
声帯筋は声帯の縁に付いている筋肉で、地声を出している時でも、裏声を出している時でも稼働できるという特性があります。
声帯筋の重要性を説いている著名なボイストレーナーであるフースラーは、「声帯筋は声帯がピンと伸ばされていないと、効果を上手く発揮できない」 と言っています。
つまり、裏声を練習して声帯をピンと張る技術を身に付けないと、ミックスボイスは習得できないと言っているのです。
レッスンでも、裏声の正しい出し方を身につけた途端に、「地声と裏声を繋ぐ感覚がわかるようになってきた」という生徒さんがとても多いです。
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裏声が苦手な人の特徴
裏声が苦手かどうかは、歌の中に登場する裏声を聞くと非常にわかりやすいです。
例えば、歌の中で急に裏声が出てくる曲を歌う場合、裏声が苦手な人は裏声と地声との間に大きな音量差ができてしまいます。
「歌の中で裏声を使うと、歌として不自然なほど弱々しくなってしまう」
これが裏声が苦手な人の特徴です。
なぜ裏声が弱々しくなってしまうのか
なぜ裏声になった瞬間に声が弱々しくなってしまうのでしょうか。
理由は裏声発声時の声帯の状態を考えると見えてきます。
裏声の時の声帯の状態
声帯は大きく分けて二つの運動ができます。
一つ目は先述した輪状甲状筋による「伸びる運動」
二つ目は「閉じる運動」
です。
裏声は、一つ目の「伸びる運動」によって間接的に声帯を接近させて出ている声です。
一方で地声は、声帯を「閉じる運動」を行い、直接的に声帯を接近させて出ている声です。
両者は声帯の密着度合いが全く違います。
裏声は声帯を閉じる運動がほとんど行われていないので、声帯同士の接触も軽く触れ合う程度です。
そのため、息が声帯の間を通過する際の「抵抗感」は比較的小さいものになります。
それに対して地声は、声帯を直接的に閉じているので、声帯同士がしっかりと密着します。
息が声帯の間を通過する際の「抵抗感」も裏声より大きくなるので、「声を押す」という感覚が裏声よりも得やすいのが特徴です。
裏声よりも地声の方が
「声に力を伝えやすい」
「押せる」
「踏ん張れる」
といった感覚があるのはこのためです。
裏声が苦手な人の声帯の状態
先述した通り、裏声は地声に比べて力が入りずらい声です。
しかし、声帯がしっかりと伸ばされて「テンション」がかかっていると、肺から来る空気にもある程度までなら耐えられます。
この状態であれば、地声ほどではないにしろ、声に力が入れられます。
これが、裏声が得意な人の声帯の状態です。
ところが、声帯があまり伸ばせていないと、テンション無くなって声帯はフニャフニャになり、空気圧に全く耐えられなくなります。
つまり、全く力を入れられなくなるのです。
これが裏声が苦手な人の声帯の状態です。
裏声がキンキンするパターンもある
「自分の裏声は、弱々しくはないけどなんかキンキンしてるんだよなぁ」
と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
実はこれも、裏声が苦手な人に自然と起こる現象の一つです。
先述した通り、裏声が苦手な人が裏声を発声すると、声帯がフニャフニャになってしまいます。
そうすると体は、「力が入らない」という問題を簡単に解決するために、フニャフニャの声帯に補助的に「声帯を閉じる運動」を加えて、「多少力が入る状態」に変えようとします。
すると、まず声に「芯」が入り、裏声特有の「柔らかさ」が失われます。
さらに、喉仏を上げた方が声帯が閉じやすいので、勝手に喉仏が上がってしまい、声が少しコミカルでキンキンした感じになります。
このようなプロセスを経て、キンキンした裏声は出来上がるのです。
スカスカの裏声よりも多少の力強さはありますが、声帯を伸ばすことによって生まれた力強さではないので、裏声が上手くなったということにはなりません。
以前として、「声帯を伸ばしてテンションをかける」という動作は苦手なままです。
さらに厄介なのは、いざ声帯を伸ばす練習をしようと思った時に、まずはこの「キンキン感」を取り払うところから始めないといけなくなる点です。
キンキンしたまま練習をしても、一向に声帯を伸ばす筋肉に負荷がかからず、トレーニングにならないからです。
そういう意味では、スカスカで力が入らない裏声よりも厄介と言えるでしょう。
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裏声を強くする練習方法
裏声を強くするには、まず小さな音量でロングトーンする練習から始めます。
いきなり大きく出そうとすると、息が漏れたり、喉に力が入ってキンキンした声になったりしやすいからです。
最初は、男性ならE4〜G4、女性ならA4〜C5あたりの出しやすい音で練習しましょう。
小さな裏声を5秒伸ばす
まずは、出しやすい音で小さな裏声を5秒伸ばします。
この段階では、多少スカスカしていても構いません。
裏声が弱い人は、声帯を伸ばしてテンションをかける動作が苦手なので、最初から力強い裏声にはなりにくいからです。
ここで気をつけたいのは、スカスカした声を嫌がって、キンキンした裏声に変えてしまうことです。
キンキンした声になると、声帯を伸ばす練習ではなく、喉を締めて声に芯を作る練習になってしまいます。
まずは小さくてスカスカしていてもいいので、キンキンさせずに5秒伸ばすことを目指しましょう。
息を増やしすぎない
裏声が弱い時に、息をたくさん吐いて強くしようとする人がいます。
しかし、息を増やしすぎると、声帯の間から空気が抜けやすくなります。
その結果、声は強くなるどころか、さらにスカスカしてしまいます。
練習中は、ため息のように息を大量に出さないようにしましょう。
息の量がわからない時は、リップロールをする時と同じくらいの息の流れ・消費量を目安にすると良いと思います。
音域・音量・秒数を少しずつ増やす
小さな裏声を5秒伸ばせるようになったら、次は「音域」「音量」「秒数」を少しずつ増やしていきます。
ただし、この3つを同時に増やすと、裏声が崩れやすくなります。
まずは小さな音量のまま、5秒伸ばせる音を少しずつ増やしましょう。
例えば、E4で5秒伸ばせたら、次はF4、その次はG4というように、近い音から順番に練習します。
新しい音に進んだ時は、音量を大きくしなくて構いません。
まずは、その音でも小さな裏声を5秒続けることを優先します。
5秒が安定してきたら、次は7秒、10秒と少しずつ長く伸ばします。
その後で、必要に応じて音量を少しだけ上げていきます。
裏声を強くしたいからといって、最初から高い音、大きい音、長い秒数をまとめて狙う必要はありません。
「5秒伸ばせる音を増やす」「秒数を伸ばす」「音量を少し上げる」という順番で進めていきましょう。
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よくある質問
裏声がスカスカになるのはなぜですか?
裏声がスカスカになる主な原因は、声帯を伸ばしてテンションをかける動作が弱いことです。
裏声は地声のように声帯を強く閉じて出す声ではありません。
声帯がしっかり伸ばされていれば、軽く触れ合うだけでも空気圧にある程度耐えられます。
反対に、声帯が十分に伸ばされていないと、息が抜けやすくなり、声がスカスカしてしまいます。
裏声がキンキンするのはなぜですか?
裏声がキンキンする場合は、声帯を伸ばす動きの代わりに、喉で声に芯を作ろうとしている可能性があります。
声帯にテンションがかからないと、体は声を安定させるために、補助的に声帯を閉じようとします。
その結果、裏声の柔らかさが減り、喉仏も上がりやすくなります。
この状態になると、声が細く、硬く、少しコミカルな印象になりやすいです。
裏声を練習すると地声の高音も出やすくなりますか?
裏声の練習は、地声の高音にもつながります。
裏声では、声帯を伸ばす輪状甲状筋が働きます。
この筋肉が育ってくると、声帯を高音に必要な状態まで引き伸ばしやすくなります。
そのため、裏声の音域が広がるだけでなく、地声で高音を出す時の限界も上がりやすくなります。
裏声の練習はどの音から始めればいいですか?
最初は、無理なく小さな裏声を出せる音から始めます。
目安として、男性はE4〜G4、女性はA4〜C5あたりから始めると練習しやすいです。
最初から高い音を狙う必要はありません。
まずは出しやすい音で、小さな裏声を5秒伸ばせる状態を作りましょう。
裏声を強くするには息をたくさん吐いた方がいいですか?
裏声を強くしたい時に、息をたくさん吐きすぎるのは逆効果になりやすいです。
息の量が増えすぎると、声帯の間から空気が抜けやすくなります。
その結果、声が強くなるよりも、さらにスカスカしてしまうことがあります。
練習では、ため息のように大量の息を吐くのではなく、リップロールをする時くらいの息の流れを目安にしましょう。
まとめ
裏声は、ただ高い声を出すためだけの練習ではありません。
声帯を伸ばしてテンションをかける力が育つことで、音域が広がり、中音域の弱声も安定しやすくなります。
さらに、地声と裏声をつなぐ感覚がつかみやすくなるため、ミックスボイスの土台作りにもつながります。
最初はスカスカしたり、思うように力が入らなかったりするかもしれません。
しかし、キンキンした声に逃げず、小さな裏声を丁寧に伸ばす練習を続けることで、少しずつ声帯を伸ばす感覚が育っていきます。
裏声が安定すると、歌える音域だけでなく、声の表現の幅も大きく広がります。
焦らず、出しやすい音から少しずつ練習していきましょう。
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