みなさんこんにちは!
FUKURAMU MUSIC SCHOOLです!
今回は、いま最も注目を集めるシンガーの一人、「Ado」さんの歌声について解説していきたいと思います。
「うっせぇわ」での衝撃的なデビューから、「新時代」「唱」など数々のヒットを生み出し、その圧倒的な表現力で多くの人を魅了し続けているAdoさん。
聴いていると、ささやくような優しい声から、地を震わすような力強い叫びまで、まるで何人もの歌手が歌っているかのように声色がコロコロと変わりますよね。
この「七色の声」とも呼ばれる魅力は、いったいどんな仕組みで生まれているのでしょうか。
今回は、細かい曲の解釈には深入りせず、「なぜAdoさんの声はあんなにも感情に刺さるのか」という部分を、音響学的な視点から整理していきます。
それでは早速いってみましょう!
Adoさんの声はなぜ「刺さる」のか?
Adoさんの歌声を語るとき、よく使われる言葉があります。
「七色の声」
「変幻自在」
このように、声色の幅広さや表現の豊かさを称える表現がたくさん出てきます。
たしかに、囁くようなウィスパーボイス、突き抜けるような高音、地を這うようながなり声まで、一曲の中でこれだけ声を変えられる歌手はそう多くありません。
ただ、これらはすべて「声色(音色)を自在に操っている」という一点に集約することができます。
そこでこのコラムでは、Adoさんの魅力を
「七色の声」 「変幻自在の表現力」 どちらも「音色を自在にコントロールする力」とざっくり定義してみたいと思います。
このコラムで1番説明したいのは「そもそもなぜ声色は変わるのか」そして「なぜ音色の変化が感情を動かすのか」という部分です。
「声の魅力の正体はそもそもなんなのか」この根本的な疑問を、音響学的な視点で解明していきたいと思います。
そもそも声が生まれる仕組み
最初に、発声の仕組みから説明していきます。
声は、喉仏の中にある「声帯」という部分が振動することで生まれています。
声帯が振動すると、まず「声帯原音」というブザーのような音が作られ、それが声帯から唇までの空間である「声道」によって共鳴し、増幅されることで声になっています。
つまり、私たちが聞いている声色は、「声帯原音そのものの質」と、「声道による共鳴のかかり方」という2つの要素の掛け合わせで決まっているのです。
Adoさんの「七色の声」も、この2つの要素を緻密にコントロールすることで生み出されています。
声色の正体は「倍音」にある
声色の話をする上で、どうしても「倍音」という概念を説明しなければなりません。
倍音とは、「基本の音(基音)と同時に鳴っている、より高い音」のことです。
私たちが「ド」の音を一つ出しているつもりでも、実際にはその裏で、無数の高い音が同時に鳴っています。
この「裏で鳴っている倍音のバランス」こそが、声色の正体です。
例えば、高い倍音がたくさん含まれていると、キンキンと明るく華やかな声に聞こえます。
反対に、高い倍音が少ないと、こもったような柔らかい声に聞こえます。
同じ音程・同じ人が歌っていても、倍音のバランスが変われば、まったく違う声色に聞こえるのです。
Adoさんは、この倍音のバランスを瞬時に、かつ自在に変える技術を持っているからこそ、「七色の声」と呼ばれているのです。
Adoさんの「七色の声」を音響学で分解する
ここからは、Adoさんが操る代表的な声を、音響学的な視点で一つずつ分解していきましょう。
地声・裏声・ミックスボイスのグラデーション
Adoさんの大きな特徴の一つが、「地声」と「裏声」の切り替えのなめらかさです。
地声は、声帯が分厚く触れ合って振動する声で、芯のある力強い響きが特徴です。
裏声は、声帯が薄く引き伸ばされて振動する声で、軽く柔らかい響きが特徴です。
普通の人は、この2つの間で声がひっくり返ってしまい、境目で「ガクッ」と段差ができてしまいます。
しかしAdoさんは、地声と裏声の間にある「ミックスボイス」を使い、声帯の閉じ具合を無段階に変えることで、低音から高音までを一本の線のようになめらかに繋いでいます。
これは音響学的に言えば、声帯原音の質を、音程の変化に合わせて少しずつ連続的に変えているということです。
「がなり声」の正体は豊富な倍音
Adoさんといえば、あの「がなり声」を思い浮かべる方も多いでしょう。
叫んでいるのに音程はしっかり保たれている、あの独特の迫力のある声です。
このがなり声の正体も、やはり「倍音」です。
がなり声は、声帯やその周辺の組織を意図的に複雑に振動させることで、通常よりもはるかに多くの高い倍音を発生させた状態です。
この大量の高い倍音が、「ザラついた」「歪んだ」という印象を生み出し、感情の爆発を表現する迫力に繋がっています。
エレキギターの「ディストーション(歪み)」をイメージすると分かりやすいかもしれません。
音を歪ませることで倍音が増え、激しく力強い音色になるのは、声もギターも同じ原理なのです。
ウィスパーボイスは「息の音」のコントロール
反対に、Adoさんは囁くような「ウィスパーボイス」も得意としています。
がなり声とは正反対の、繊細で内緒話のような優しい声ですね。
ウィスパーボイスは、声帯を完全には閉じきらず、わざと息を多めに混ぜることで、声に「息の成分(ノイズ)」を加えた声です。
声帯がしっかり鳴る成分よりも、息が漏れる「サー」という音の成分が増えることで、柔らかく親密な印象が生まれます。
つまりAdoさんは、「声帯をしっかり閉じて倍音を増やす(がなり)」方向と、「声帯を緩めて息を混ぜる(ウィスパー)」方向の、両極端を自在に行き来できるということです。
この振れ幅の大きさこそが、聴き手の心を大きく揺さぶる正体なのです。

なぜ「音色の変化」が感情を動かすのか
ここまでで、Adoさんが声色(倍音のバランス)を自在に操っていることを説明してきました。
では、なぜその「音色の変化」が、これほどまでに私たちの感情を動かすのでしょうか。
音色の変化は「情報量」の変化
人間は、声色から相手の感情を読み取る能力を持っています。
怒っている時の声、泣いている時の声、囁く時の声を、私たちは無意識に聞き分けていますよね。
つまり、声色(倍音のバランス)が変わるということは、聴き手にとって「感情の情報」が変わるということなのです。
Adoさんは一曲の中で、ウィスパーからがなりまで、声色を大きく変化させます。
これは、聴き手に対して「繊細さ」から「激情」までの幅広い感情の情報を、次々と届けているということです。
振れ幅が大きいほど心は動く
感情というのは、変化が大きいほど強く揺さぶられます。
ずっと同じ音量・同じ声色で歌われるよりも、静かなところと激しいところの差が大きいほうが、聴き手の心は大きく動きます。
Adoさんの歌が「刺さる」と言われるのは、この音色の振れ幅、つまり感情の振れ幅が、人並外れて大きいからなのです。
非常に面白いですよね。
このように、表現力の正体を音響学的に分解すると、「音色(倍音)のコントロール幅の大きさ」に行き着くのです。
Adoさんの声に学ぶボイトレ・練習方法
ここまでで、Adoさんのような魅力的な声は、声色(倍音)を自在にコントロールすることで生まれていると説明してきました。
では、私たちが実際の練習でその感覚に近づくには、どうすれば良いのでしょうか。
ここからは、音響学的な考え方をもとに、具体的な練習方法を紹介していきます。
まずは自分の地声と裏声の「境目」を知る
最初におすすめしたいのは、自分の地声と裏声が切り替わる「境目」の音程を知ることです。
低い音から少しずつ音程を上げていき、声がひっくり返りそうになる場所が、あなたの声の「切り替えポイント」です。
この境目は、人によって違います。
まずは自分の声が、どのあたりで地声から裏声に切り替わろうとするのかを把握することが、すべての出発点になります。
いきなり高い声を出そうとする必要はありません。
まずは、自分が無理なく出せる範囲で、ゆっくりと音程を上下させてみましょう。
ミックスボイスで「繋ぎ目」をなめらかにする
境目が分かってきたら、次はその段差をなめらかにする練習です。
おすすめは、「ンー」というハミングや、「ウ」の母音で、低い音から高い音へサイレンのように繋いでいく練習です。
大きな声を出そうとするのではなく、声がひっくり返らずに、なめらかに繋がる音量と力加減を探すことが目的です。
このとき大切なのは、喉に力を入れて無理やり繋ぐことではありません。
むしろ、力を抜いて、声帯が自然に薄くなっていく感覚を探していきます。
もし途中で声がひっくり返ったり、苦しくなったりする場合は、音量を少し落としてみてください。
Adoさんのなめらかな声の繋ぎも、この「無段階に切り替える感覚」を磨いた先にあるものです。
「がなり」は足し算ではなく、安全第一で
がなり声に憧れる方も多いと思いますが、ここは特に注意が必要です。
がなり声は、やり方を間違えると声帯に大きな負担がかかり、声を痛める原因になります。
大切なのは、喉を締めて力で叫ぶことではありません。
まずは普通の発声で、芯のある安定した声を出せるようになることが先決です。
その土台ができてから、ごく軽く声をザラつかせる感覚を、少しずつ試していくのが安全です。
痛みや違和感がある場合は、絶対に無理をせず、専門家に見てもらうようにしましょう。
表現は「音量」ではなく「音色」で作る
最後に、Adoさんの歌から学べる最も大切なことをお伝えします。
それは、「表現は音量だけで作るものではない」ということです。
多くの人は、感情を込めようとすると、つい声を大きくしようとしてしまいます。
しかし、ここまで説明してきた通り、聴き手の心を動かすのは音量そのものよりも、「音色(声色)の変化」です。
同じフレーズでも、息を多めに混ぜて優しく歌うのか、声帯をしっかり閉じて力強く歌うのかで、伝わる感情はまったく変わります。
練習では、一つのフレーズを「ささやくように」「力強く」「明るく」など、声色を変えて歌い分けてみてください。
この「声色を意図的に変える」という意識こそが、Adoさんのような表現力に近づく第一歩です。

Adoさんの歌声に関するよくある質問を6問のQ&Aにまとめました
1.Adoさんのような「七色の声」は普通の人でも出せますか?
ある程度までは、練習で近づくことができます。
「七色の声」とは、声色(倍音のバランス)を自在にコントロールしている状態のことです。
息の混ぜ方や声帯の閉じ具合を変える練習を重ねることで、誰でも声色のバリエーションは少しずつ増やしていけます。
ただし、Adoさんのレベルは長年の訓練と高度な技術の積み重ねによるものなので、焦らず段階的に取り組むことが大切です。
2.がなり声やデスボイスは喉に悪いですか?
やり方を間違えると、喉に大きな負担がかかります。
特に、喉を強く締めたり、息を力任せに押し出したりしてがなろうとすると、声帯を痛める原因になりやすいです。
プロの歌手は、安全に声を歪ませるための技術を身につけた上でがなり声を使っています。
まずは芯のある安定した発声を土台として作り、がなりは専門家の指導のもとで少しずつ試すことをおすすめします。
痛みや声枯れがある場合は、すぐに練習を中止してください。
3.ミックスボイスはどれくらいで習得できますか?
個人差が大きいですが、感覚をつかむまでには数ヶ月かかることが多いです。
ミックスボイスは、地声と裏声をなめらかに繋ぐ繊細なコントロールが必要なため、一朝一夕には身につきません。
ハミングやサイレンのような練習で、声がひっくり返らない感覚を毎日少しずつ探していくことが、習得への近道です。
自己流で力んで練習すると、かえって遠回りになることもあるため、不安な方は一度レッスンで確認してもらうと安心です。
4.Adoさんの曲は音域が広いですが、原キーで歌えないとダメですか?
原キーにこだわる必要はまったくありません。
Adoさんの楽曲は音域が広く、原キーのまま歌うのは多くの人にとって簡単ではありません。
大切なのは、自分が無理なく声色をコントロールできるキーで歌うことです。
カラオケでキーを下げても、表現力や声色の使い分けは十分に練習できます。
まずは歌いやすいキーで、声色の変化を意識して歌うことから始めてみましょう。
5.Adoさんのような表現力は独学でも身につきますか?
基礎的な部分は、独学でも取り組むことができます。
例えば、同じフレーズを声色を変えて歌い分けたり、息の混ぜ方を変えたりする練習は、自分でも試すことができます。
ただし、声色のコントロールは、自分では喉を締めているだけなのに「表現できている」と勘違いしやすい部分でもあります。
客観的に自分の声を聴いてもらうことで、改善のスピードは大きく上がります。
特にがなりや高音は、安全に出せているかの判断が難しいため、ボイストレーナーに確認してもらうことをおすすめします。
6.カラオケでAdoさんの曲を上手く歌うコツはありますか?
まずは、無理のないキーに調整することが一番のコツです。
Adoさんの楽曲は音域が広く、原キーのまま歌うと高音で喉が締まり、声色のコントロールどころではなくなってしまいます。
自分が地声と裏声をなめらかに行き来できるキーまで下げることで、表現に意識を向ける余裕が生まれます。
その上で、サビでいきなり大声を出すのではなく、Aメロは息を多めに優しく、サビは芯のある声で、というように声色の差を作ることを意識してみてください。
音量よりも声色の変化で抑揚をつけると、無理なくAdoさんらしい表現に近づけます。

まとめ
いかがでしたでしょうか。
Adoさんの「七色の声」は、ただ感情的に叫んでいるわけではありません。
声帯原音の質と声道の共鳴、そして倍音のバランスを緻密にコントロールすることで、結果として豊かな声色と表現力が生み出されているのです。
そのため、私たちの練習でも「もっと感情を込める」と気合で頑張るより、「どう声色を変えれば伝わるのか」を探すことが大切です。
地声と裏声の境目、ミックスボイスの繋ぎ、息の混ぜ方を丁寧に確認しながら、自分の声色の引き出しを少しずつ増やしていきましょう。
特にがなり声や高音は、焦って力で押し込むと、声を痛める原因になります。
魅力的な声ほど、実は力任せではなく、繊細なコントロールの上に成り立っています。
無理のない範囲で練習を重ねながら、あなただけの「七色の声」を少しずつ育てていってください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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